芸術の哲学・過去の講座内容
芸術の哲学(1)
「世界との関わり方」をテーマに、「画家は何を、どう見てきたか」について考えていきます。
第1回 フェルメール「画家のアトリエ」: ありのままの世界、作られた世界
私たちは絵画というものが「見たものを描く」「ありのままに描く」と考えがちです。しかし、実のところ絵画作品は、画家の巧妙な仕掛けによって創作された世界です。その秘密を読み解きます。
第2回 ターナー「国会議事堂の火災」: 「風景」の誕生
太古以来、絵画は人物とその周辺の物を描く対象としていました。自然の風景が絵画の対象となったのは意外にも近代のことなのです。風景が描かれるようになった背景を考えます。
第3回 セザンヌ「温室のなかのセザンヌ夫人」: 自然の分析
一般に、科学が理性的なのに対して芸術は感覚的と思われています。しかし、科学の発展は芸術にも大きな影響を与えたのです。その過程を検証してみます。
第4回 ムンク「叫び」: 感情の復権
19世紀から20世紀にかけて経済活動が世界規模に拡大すると共に、国境を超えて戦争や伝染病が広がるようになりました。不安の時代の芸術を考えます。
芸術の哲学(2)
テーマは「象徴(シンボル)の魔力」です。画家たちの「見えないものを描く」ための挑戦について考えます。絵画芸術がもつ特徴の一つは「見たものを忠実に描く」ことですが、同時に「見えないものを描く」ことも絵画の仕事です。近代以前の代表的な「見えない対象」は聖書や神話に登場する存在でした。近代以降も「見えないもの」が描かれますが、それは人間の心でした。その変遷をたどってみましょう。
第1回
ボッティチェルリ「春」:ルネサンスの絵画には多くのギリシャ哲学的シンボルが使われています。その意味を考えます。
第2回
デューラー「メレンコリア・Ⅰ」:中世の魔法や錬金術から近代の精神が生まれていく過程を追ってみましょう。
第3回
ヴァン・ゴッホ「アルルの寝室」:形のない心の内部を画家ははどんな方法で表現しているのでしょうか。
第4回
ピカソ「アヴィニョンの娘たち」:一見稚拙に見えるほどユニークなピカソの造形には、論理的な根拠がありました
芸術の哲学(3)
「リアリズムの追求」をテーマに、「そっくりに描くことの意味」について考えていきます。
第1回 ファン・アイク「アルノルフィニ夫妻の肖像」
細部に宿る時代の意識
第2回 ゴヤ「裸体のマハ」
人間性の深い洞察について考えます。
第3回 クールベ「アトリエ」
芸術と社会の関係について考えます。
第4回 マネ「オランピア」
神話からの脱却について考えます。
芸術の哲学(4)
「異文化との接点」をテーマに、「見知らぬものへの想像力」について考えていきます。西洋絵画の4作品を取り上げて、書かれた時代背景、文化的環境、表現の特徴などを検討しながら、西欧の画家が異文化と直面した時に受けた影響を考えます。5講目には造形作家の山本じん先生との対談を行います。
第1回 ドラクロワ 「アルジェの女たち」
西欧における東方への憧れについて考えます。
第2回 ゴーガン「イア・オラナ・マリア」
「未開」の再評価について考えます。
第3回 ロートレック「ムーラン・ルージュのポスター」
「日本趣味」について考えます。
第4回 モンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」
現代社会と芸術について考えます。
第5回 「なぜ描くか? いかに描くか?」
造形作家の山本じん先生をお迎えして、対談形式で創作の秘密について伺います。
芸術の哲学(5)
「男と女の複雑な関係」をテーマに、「人間関係の変化」について考えていきます。
第1回 レオナルド・ダ・ヴィンチ 『聖アンナと聖母子』
処女性にまつわる神話
第2回 プーサン 『サビニの女たちの掠奪』
愛は奪い取るものなのか?
第3回 ワトー 『愛の島の巡礼』
男と女の果てしない駆け引き。
第4回 スーラ 『グランドジャット島の夏の日曜日の午後』
時代と男女関係の型とは?
芸術の哲学(6)
『視線の進化』をテーマとして論じます。近代絵画は遠近法を発端として「視線」にこだわるようになりました。だれが、どこから見ているかという問題が絵画の基礎になったのです。それによって「だれにとっても同じものが見える世界」は過去のものとなりました。同時に、そこから絵画は主観的な抽象化の道をたどることにもなりました。四つの作品を見ながら、その過程を考えてみましょう。
第1回 ベラスケス「宮廷の侍女たち」
自分自身を鏡に映して見る相対化の視点について考えます。
第2回 モネ「パラソルをさす女」
「見ている世界」と「見えるはずの世界」の違いについて考えます。
第3回 マティス「大きな赤い室内」
遠近法のような「リアルな表現」を離れた「心の表現」について考えます。
第4回 カンディンスキー「印象・第三番」
現代のデジタル社会にも通じる「記号としての絵画」について考えます。
芸術の哲学(7)
今回の芸術の哲学は「憧憬」について考えます。人間は太古から手の届かない対象に憧れてきました。そうした憧れが偶像を生み出し、芸術を生み出したとも言えます。画家たちが何に憧れ、それをどう視覚化したのか、じっくり検討しましょう。
第一回 ラファエルロ 「小椅子の聖母」
聖母には理想の女性像が反映しているのでしょうか。
第二回 レンブラント 「フローラ」
「春」や「美」などの抽象的な概念はどのようにシンボル化されるのかを考えます。
第三回 ルソー 「眠るジプシー女」
幻想と芸術の関係について考えます。
第四回 シャガール 「私と村」
記憶は変形されて全く新しい世界を作ります。
芸術の哲学(8)
今回の芸術の哲学は「物質性」について考えます。現代の芸術は一方で抽象的な表現を模索しながら、もう一方では確かな対象としての「モノ」を絵画の中に取り入れようとしています。科学技術が急速に発達した20世紀の芸術が、物質性の扱い方をめぐって苦闘する様子を概観し、その意味を考えます。
第1回 ブラック『ギターとアコーディオン』
「描く対象」について考えます。
第2回 シュヴィッタース『メルツビルト9』
「創作の意図」について考えます。
第3回 ジョーンズ『三枚の旗』
「既成のイメージと独創」について考えます。
第4回 フォンタナ『空間概念』
「表現の極限」について考えます。
芸術の哲学(9)
今回の芸術の哲学は「表現法」について考えます。印象派の絵画は光学理論を取り入れましたが、後期印象派になると科学批判の視点が表現に影響を与えます。そこから現代の多様な表現がいかに生まれたかを概観し、考察します。
第一回 カンディンスキーからブランクーシへ
抽象について考えます。
第二回 後期印象派からレジェへ
単純化と内面化の関係を考えます。
第三回 マティスからクレーへ
見えないものの表現について考えます。
第四回 レアリスムからシュールレアリスムへ
現実性について考えます。
芸術の哲学 (10)
今回の芸術の哲学は「美術運動」について考えます。現代の美術は絶えざる議論の中で形作られてきました。表現の仕方に関する論争にとどまらず、「美とは何か」「芸術家の仕事とは何か」に至るまで、思想的な対決が今も続いています。その深い意味を考えます。
第1回 構成と表現について考えます。
第2回 制約と自由について考えます。
第3回 静と動について考えます。
第4回 ペインティングとイラストレーションについて考えます。
第5回 画家・高橋真琴先生をお招きして創造の秘密を伺います。
芸術の哲学(11)
今回の芸術の哲学は『幻想と芸術』について考えます。1960年代に澁澤龍彦氏が紹介した「ユニークな画家」たちも、今では展覧会で広く知られるようになりました。しかし作品の深い文化的意味は、まだ充分に明らかにされていません。それを解き明かしていきましょう。
第一回 8/19
デルヴォーの神殿
古典的な舞台に描かれる人物像を考えます。
第二回 8/26
ゾンネンシュターンの変形
「アール・ブリュット」について考えます。
第三回 9/02
バルテュスの謎
夢のような街角や室内について考えます。
第四回 9/09
マグリットの異世界
作家独自の記号的世界について考えます。
芸術の哲学 (12)
今回の芸術の哲学では、現代芸術の幻想的表現と他の文化領域の関係を考えます。特にシュールレアリズムに焦点を当て、心理学や文学などと絵画の相互関係をたどってみましょう。
芸術の哲学(13)
今回の芸術の哲学では、「奇想の世界」について考えます。古くから人間は絵画によって現実にはあり得ない世界を描いてきました。なぜそうした世界が生まれるのか、それによって何を表現しているのか、様々な時代の作家を検討しながら考えます。
第1回08/24
ヒエロニムス・ボッシュの不思議な世界
第2回08/31
アルチンボルドのだまし絵
第3回09/07
エッシャーの異次元世界
第4回09/14
福田繁雄の錯覚イメージ
芸術の哲学(14)
今回の芸術の哲学では、異端の芸術について考えます。私たちが美術館で普段接するのは、有名な作品・有名な作家が中心です。しかし、あまり知られていない作家のすぐれた作品が、何かのきっかけで再発見されることもよくあります。いわゆる「売れる絵」ではない、鬼才の作品を取り上げて芸術の意味を考えます。
第1回
田中一村:奄美大島に移住し、独自の表現を獲得した日本画家の作品と人生を考えます。
第2回
高島野十郎:科学者の目で対象を見据え、複雑な自然を表現した作品を検討します。
第3回
マルセル・デュシャン:絵画や彫刻など、芸術全般を相対化した作家と作品を考えます。
第4回
赤瀬川源平:ジャンルを超えて柔軟な表現活動を展開した作家を振り返ります。
芸術の哲学(15)
今回の芸術の哲学では、象徴主義の芸術について考えます。絵画は「見えるものを描く」のが普通ですが、宗教画のように「見えないものを描く」のも絵画の重要なテーマです。特に19世紀末には「魂の絵画」とも言うべき象徴主義の絵画が多く描かれました。代表作品を取り上げて「芸術の純粋化」について考えます。
第1回
ラファエル前派
ラファエロ以後の芸術を否定した彼らは絵画のテーマをどう考えたのでしょう。
第2回
ギュスターヴ・モロー
「幻視の画家」と言われるモローの表現を通じて、精神性について考えます。
第3回
オディロン・ルドン
夢と現実のどちらが真実に近いのか?幻想的絵画の意味を考えます。
第4回
ベルギー 象徴派
世紀末芸術は死を理想的で甘美なものと考えました。なぜでしょうか?